音楽ジャンル「Inspirational」とは。

2017.3.27

こんにちは、Director タローです。

今日は、この聞きなれない音楽ジャンルについて。

 


 

今回、ジョン・レノン・ソングライティングコンテストでDUCの楽曲「United Dreamers」がFINALISTを受賞したのは「Gospel / Inspirational」というカテゴリーです。
John Lennon Songwriting Contest には、Jazz, Rock, R&B, Latin, Children’s(童謡) など、12のカテゴリーがあります。

そのうちの一つ、Gospel/Inspirationalの、Gospelについては、こちらを見ているみなさまはご存知の通り、黒人霊歌にルーツをもつキリスト教音楽です。
しかし、/(スラッシュ)の後についた「Inspirational」というカテゴリーはきっと耳慣れないのではないでしょうか。
今回の受賞曲 United Dreamers は、明らかにこの Inspirational に属する音楽です。

 

an Inspirational song、と言った時には、以下の二つの、境界が微妙な楽曲のうちのどちらかを意味します。

 

A.教会の中でいう場合。(こちらが語源と推察できます)
Gospelも、内側をみると様々なサブカテゴリーがあります。中でも最も代表的なものは、神を賛美するために、シンプルで伝統的な言葉を用いる「Praise & Worship」と呼ばれる楽曲群です。Hallelujah(神を賛美しよう!)や、Thank you Lord(主に感謝します!)や、I worship you from bottom of my heart..(心の底からあなたを崇めます)といった古典的な歌詞で、集まっている人々も共に歌うのです。楽曲が始まるなりいきなりテーマに入り、ひたすら繰り返し、神への思いのたけをただぶつけます。
一方で、Gospelの中でもInspirational というのは、聖書のメッセージを伝えることを目的としつつも、曲そのものがある程度ストーリーを持っていたり、自分の礼拝というよりも人を励ますための言葉を含んでいたりします。聖書のメッセージにインスパイアされた楽曲、というようなニュアンスです。牧師の説教の直前に置かれることが多く、みんなでというより、訓練されたクワイアーが歌うことが多くあります。

つまり、Gospelのサブカテゴリーとしての、Inspirational、ということです。
例えば、Oh Happy Day や You Are Good や Total Praise, Hosanna, In The Sanctuary などは Praise&Worship で、The Best Is Yet To Come や My Life Is In Your Hands, Bless Meなどは Inspirational と呼ばれうる、ということです。 DUCがGospelを歌う際は、この Inspirationalから多くの曲をピックアップします。
DUCはクリスチャン集団ではないので、賛美、礼拝のための楽曲をアートとして開花させるという希望を持つのは全く見当違いだからです。

 

Gospel のサブカテゴリーとしてのInspirationalの例、The Best Is Yet To Come

by Donald Lawrence /演奏 DUC

 

B.教会の外でいう場合。
音楽的、精神的にゴスペルの魅力的な要素を持っていながら、特定の宗教に限定される言葉(Hallelujah, Jesus, Lord, Hosanna など)を持つことのない楽曲を指します。代表的なヒット曲は I Believe I Can Fly, World’s Greatest(R.Kelly), Optimistic, Hold On(The Sounds Of Blackness)、あたりです。キリスト教が優勢なアメリカでは、あまりInspirational だけを専門に行うアーティストというのはいません。ポピュラーのアーティストや、まれにゴスペルのアーティストがそのような楽曲をアルバムに入れたり発表したりする程度です。しかしながら、多民族国家の自覚を増しているアメリカ社会の中で、このInspirationalというカテゴリーの存在感がある程度高まってきている可能性があります。
また、Seasons Of Love や We Are The World をクワイアーで楽しむ日本人のゴスペル愛好家層にとって、アートとして高みを目指せるジャンルとなる可能性が高いと感じます。
DUCはまさに、このジャンルでのアーティストを目指しているということになります。

 

She Is Love: Gospelに近いスタイルを持ちながら、内容は女性という存在の素晴らしさと暴力の虚しさを語る。by The Sounds Of Blackness (PCから字幕モードをonにしてごらんください)

 

どうでしょう、つたわりましたでしょうか。

 

上記、A,Bの境目は微妙なこともあります。

ゴスペルシンガーとして揺るぎない地位にいるヨランダ・アダムスが I Believe I Can Fly をヒットさせたため、それを教会で歌うクワイアーがあったり、ゴスペルにルーツがある曲として、「明日にかける橋」を教会で歌うケースもあります。その場合、それらの楽曲は、教会でも機能する楽曲として、「Gospel の中の Inspirational」と思われることもありますし、教会の信仰の外の楽曲だから「Inspirational」と呼ばれる、というケースもあるということです。

 

いずれの意味であれ、このカテゴリーこそが、キリスト教信仰に不慣れな日本人でも魂を込めやすく、アートとして追うことが出来得るカテゴリーなのではないか、そのようにDUCは考えています。

 

  • 音楽ジャンルとして Power Chorus と最も近い意味を持つ単語と言えます。ただ、Power Chorus は Inspirational も Gospel も含みますので、ややずれていますが。それから、ちょっと「Inspirational」という響きが、日本では少し馴染みづらいかも知れませんね。

 

 


ドリーマーズ・ユニオン・クワイアー

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