ケンテ / 命のコーラスを飾る色
2017.8.11
ローブは僕らの答えではない。
「命のコーラス」にふさわしいビジュアルテーマがあるはずだ。
10年目にして初めてユニフォームを外注するにあたりDUCは、あしらう素材に「ケンテ」を選んだ。
ケンテとは元々、西アフリカ、ガーナ周辺に伝統を持つ、アサンテ族及びエウェ族という人々の織る布(米 Wikipedia)で、アフリカの織物文化の中でも最も知られたものの一つ。本来は、王族や地位のある人々が身につけた。様々な模様や色があって、本来はマスやライン内の一つ一つの模様が意味を持つという。
アフリカの本来のケンテは織物であり高価だが、ここで言うケンテ、つまり、アメリカの黒人たちが身につけるケンテは、ケンテ模様をプリントしたプリント布になる。
以下に、僕らが頼りにする「ミセス・ゴスペルデータバンク」が、Power Chorus のために書いてくれたケンテについてのノートがある。
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アメリカの黒人がケンテを模した模様の布を身につけるのは、自分たちがどこから来たのかを思い起こすためであり、誇りと結束の表現でもある。色合いの豊かさは、私たちが色とりどりの人種であることを表し、喜びと微笑みと希望に溢れた人種であることを表す。私たちは音楽的であり、リズミカルであり、ソウルに溢れている。神を信じ、そのインスピレーションを人と分かち合う。
ケンテ模様は、私たちを過去とつなぎ、未来への希望を、いつも思い起こさせてくれる。
-エリカ・ブライアント
DUCではローブを尊ばない。日本人のクワイアーはアメリカ人のゴスペルクワイアーを模したローブを身につけたがるが、キリスト教活動でないなら「できるだけクリスチャンのふりをする」というようなアートの作り方は、宗教的、文化的な不敬になりかねないと考えるためだ。
セントラルパークでアメリカ人が袈裟を着て般若心経を読んでる姿を見かけて声をかけたら「仏教徒になる気はないけどカッコイイから」と言われたところを想像すれば、その違和感がわかるのではないか。
日本人はゴスペルミュージックについて、キリスト教の「賛美音楽」である事実以上に、「黒人音楽」であることに惹かれている。その感覚が宗教的な感覚と混乱を起こさなくて済むよう、Power Chorus という言葉があるわけが、では、その黒人音楽コーラスであることを尊ぶ僕らにふさわしいユニフォームはなんだろうかと考える。そこで選んだのがこのケンテだ。
アメリカでは、黒人と、黒人文化を尊重する人々が、その敬意を表すような機会に身につけることが多い。代表的には、黒人歴史月間と呼ばれる2月や、マーチン・ルーサー・キング・ジュニア・デイなどだ。
(写真:Yahoo.com で Kente Dress の画像検索結果のスクリーンショット)
ネット上でもってぃがアフリカの素材に精通した業者「ファティマート」を見つけてきた。それが奇遇にも、かつてDUCと共演したことのあるアフリカンダンサーだった。
全身ケンテで覆うことで「黒人ぶった」テイにはなりたくない。ある程度スマートな謙虚さを持って身につけたい、と、ミーティングで意見を交わした。
生きるために歌う、その文化を育てた奴隷たちと、被差別民族の系譜。彼らのコーラスのパワーを継ごうとする Power Chorus にふさわしいビジュアル素材。
こうして、DUC初めての発注ユニフォームが、ケンテユニフォームとなった。
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