愛知らぬ子の選択肢 [Star People コラム]

されなかった子はずっと人を愛せませんか?

 

まだ講師ではなく、大学にミュージシャンとして出入りしていた頃にそんな悲しくて重たい質問をしてきた学生がいた。この質問が、Star People という曲を書くきっかけになったように記憶している。

「そんなことはない。」と僕はとっさに答えたが、それは答えを持っていたというより、絶対にそんなことはないという確信があっただけだ。

 

「愛というのは状態であって、限りあるエネルギーじゃない。」

 

僕は言葉を一生懸命つなぐ。まるで、口から出た言葉が真実につながってゆくと考えているかのようだ。僕にとって喋るというのは真実のピラミッドの周りを叩いてゆくような作業なのだ。

しゃべっていてなんとなく輝いている言葉を発してゆく作業が、ここかな、と思いながらコンコンと壁を叩いてゆく作業だ。そのうちにどこかに入り口が見つかって一つ中に入れる。中も迷宮なので、コンコンと壁を叩いてゆく。

 

「例えば愛が半円形だとするでしょ。親というものを四角いタイルに例えるとして、的確な愛を知っている親は、その四辺のうち一辺が半円形に膨らんでいるとする。自分もそれと同じになりたい、と子供が思えば、子供も同じように、四角いタイルの一辺が半円形に膨らんだタイルに育つ。ここには、二つの同じ形のタイルが生まれる。」

 

伝わっている確信がない。が、指で空間をなぞりながら僕は続ける。

 

「愛されなかった子供を一枚の四角いタイルに例えるとして、その子は、四辺のうちの一辺が半円状にへこんだ子供になる。」

 

僕自身も目玉だけ宙を見上げ、自分が言っている例えがあっているか確認しながら進む。

 

「言っている通りこの例えでは、愛というのは “半円形” なんだ。愛された子供も愛されなかった子供も、半円形をその身に持っているんだ。一人は膨らみとして、一人はへこみとして。愛された子供は”自分が愛されたように” 人を愛することができ、愛されなかった子は ”自分が求めたように” 人を愛することができる。」

 

「愛された子供たちは愛のある世界を守って行けるが、愛されなかった子供たちはゼロから1を作り出すことができる。つまり、愛のなかった場所に愛を作り出すことができるんだ。」

 

している間、僕の頭の中の景色に座り込んでいたのは、自分たちとは違うからよそ者だと言われ、どこをどうすれば人から好かれるのかわからず、膝を抱えた子供たちだった。彼ら/彼女らはまったく間違った世界に生まれて来てしまったのではないかと感じながら日々を生き、世界に復讐したり自分を罰したりする者になるか、自分のような子が愛されるように世界を変えようとする者になるか、紙一重の間を育ってゆく。

 

の曲、Star People は彼ら/彼女らに捧げる讃歌だ。

 

ところで、あの日僕の話を一生懸命聞いていた彼は、後に童謡を歌うシンガーになった。


ドリーマーズ・ユニオン・クワイアー

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