名脇役を探し出せ / I Don’t Want To Miss A Thing アレンジノート

音程 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 4.5

リズム: ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 4.5

歌詞 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 5

技術 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 5


ちらかといえば洋楽の方が扱い慣れているので、番組史上初の洋楽ついに来てくれた、という感じだ。

美しく、シンプルな作りの楽曲だ。ボーカルもそこまで技巧的ではなく、メロディーを大事にする。洋楽でもマライアやビヨンセなどの歌姫たちはメロディーをアレンジしすぎてどこまでが本来のメロディーかわからないことさえある。それに比べればやりやすい。

 

しかしその分、繰り返しの多いサビの中で最後までリスナーの心を捉えるのはボーカルの声質と、曲の進行に合わせて増大してゆくその声のパワーによるところが大きい。スティーブン・タイラーは世界で最も個性が際立つボーカルの一人と言ってもいい。この声質そのものに合唱みんなでトライしてしまったら、ものまねという別のエンターテインメントになってしまう(そしてそれではものまね合唱団に勝てない)。

 

単独の声質ではなくアンサンブルの力に置き換えて乗り切らなくてはいけないが、このシンプルな楽曲を料理するために、そこにブレンドするメロディー以外の素材がもう一つ欲しい。でも、広く長く愛されている曲なのでここにあまり勝手な素材を持ち込みたくはない。

 

を澄まして原曲の中から「第二の主人公」とも言える名脇役を探し出す。すると、弦楽器群が、ただ美しい和音を支えるだけではなく、かなり頻繁に印象的なフレーズを弾いている。これを歌に取り込んでゆくこととする。歌詞の邪魔をしないように慎重にしなくてはならない。

繰り返されるサビは、同じ繰り返しであってはならない。なぜなら合唱はアンサンブルでパワーを作っているのであって、ボーカル単独のパワーで魅せているんではない。原曲ではメロディーラインが同じでもボーカルが高潮してゆくことで魅せてゆくことができるが、今回は合唱全体の盛り上がりをリードするためには適切なアレンジが必要だ。

 

そのためにも盛り込んだ、最後のサビの「The sweetest dream would never do」の複雑な和音は、このチームだからこそトライしてもらえる高度で歌いにくいものだ。

 

曲ではフェードアウトしている最後のシメの処理について考える。エアロスミスの印象に影響されてここをパワーで押し切って終わろうと思うと、実のところ、パワーだけなら芸人が勝る。芸人にはなりふり構わない声の強さがあるから、綺麗な声を出す訓練をしているグループはどうしてもパワーでは若干遅れをとるのだ。

 

それに、その歌詞は、「I don’t wanna miss a thing(何一つ逃したくない)」、明日会えなくなるかもしれない愛する存在の寝顔を見ながら、その寝息一つも聞き逃したくない、だから眠ってしまいたくない、という思いだ。情熱的なサビからアウトロに移行してくるが、最後の景色はベッドルームの静かな夜へ引き戻したい。

最強ボーカリストの最大の武器はなんと言ってもその「かっこよさ」だ。この歌詞で別れ際をクールに決めてもらいたい。最後のシメを低音パートだけが持ってゆく、というシメ方が他にないし、このチームにこそ似合うはずだ。

 

メラリハーサルでの演奏が終わった時僕は「うわお」と小さく叫んだ。ステージ上にいたのは合唱でこれまで見たことがないかっこいい集団だった。自分で震えるほどの最適解だったと感じられた。

全14曲中最高得点をマークしたこのアレンジが、多くの人にとっての合唱の印象を変える役に立ってもらいたい。

@gassho_battle 😭#オールスター合唱バトル ♬ オリジナル楽曲 – オールスター合唱バトル


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