フィクションが真実を運ぶ。[Fantasy]

Earth Wind & Fire のリーダー、モーリス・ホワイトが、1977年に公開されたスピルバーグ監督の映画、「未知との遭遇(Close Encounters of the Third Kind) )」にインスパイアされて書き上げた一曲だという。

 

「普通のディスコ曲とは違う。一度その物語を知れば、その世界観に浸り続けていたくなる一曲だ。」と自身で語っている。

 

16世紀から続く黒人霊歌の歴史からして、アフリカ人たちがアメリカに持ち込んだビートはそもそもスピリチュアルな言葉をこそ運んでいたはずだった。時代が変わってヒットソングといえばラブソングとなり、かつて人々の人生を支えたビートは、恋愛の情熱や、性の興奮をのせ、一夜の開放感を追求する事が主な役割となっていった。そのような中で Fantasy は、ある意味ではかつてのスピリチュアルなメッセージを運んでいたビートの役割を黒人音楽に取り戻した一曲とも言えるだろう。

 

1970年に活動を開始したEW&Fは、そのチーム名がもともと錬金術などでいう元素名「土、風、そして火」で、そもそもその生い立ちからして、今風に言えば「スピリチュアル」な要素を持ったグループだと言える。四大元素の「水」が抜けている理由があるが、ここでは割愛。

 

1970年台はアメリカでさまざまな精神的な変革が起こった時代だという。例えば、キリスト教がダントツに優勢であったこの国で、仏教が一気に拡大した。ベトナム戦争の敗退や、大統領の汚職、黒人差別の法律上の終焉などを経て、「今まで人々が信じてきたアメリカ、信じてきた価値観が音を立てて崩れた時代」だという。

 

何かの特集番組で見たが、60年台半ばに正義の戦争に向かう英雄としてベトナムへと見送られたにアメリカ兵たちが、70年台に入って帰国したら国は反戦ムード一色で、まるで犯罪者のような気分になったと言っていた。そのくらい高速で正義に対する人々の考え方が再構築された時期なのだろう。

 

これまでとは違う正義や信じられる論理を求めて人々の精神が四方八方へ羽ばたき始め、既存の宗教に変わる新たな精神的な価値観が求められた時代だったということが、この時期のアメリカのヒット曲群からも伝わってくる。

 

Fantasy の歌詞が繰り返し言及している「永遠の命」はもともとキリスト教の専売特許で、少なくともその啓蒙は宗教の領域の話だ。各宗教の秘儀とも言えるその真理を無宗教の宇宙の言葉に翻訳してディスコビートに乗せ、それがヒットするという状況から、当時のアメリカの精神的な変革の大きさを想像する事ができる。

 

ィクションである映画の物語を単に歌にしたものだろうか。それとも、はっきりとそのメッセージを事実として人に伝えようとしたのだろうか。

 

その点は分からないし分からなくてもいい、というのが歌というメディアの最大の価値だろう。

 

フィクションかノンフィクションかに関係なく(関係ないからこそ)、真実のメッセージは感情の中に残る。

 

まさに、「何者もそのファンタジーを消すことはできない」。

 

 

 

 

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    https://www.youtube.com/watch?v=U912FCyN270


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