緩急と人材 / DEPARTURES by 歌ウマ芸人合唱団

人合唱団のアレンジは3回目になるが、自由度が高い。

 

総合的な歌唱力そのものという面では演歌や最強に引けを取るかもしれないが、ちょっと他の合唱団ではやってもらいづらい言葉や音使いなど思い切ったことをしてもらえるし、色々な声が使える。音量面でも表現力としてもダイナミックレンジが広いし、ものまね合唱団ほどの数ではないとしてもチャンス大城さんやこがけんさんのような「飛び道具」も備えている。

 

が、その一方で選曲のDEPARTURESの第一印象は、遊びやすい曲ではない。それなりに深刻で、冬景色をイメージしたしっとりさが先にたつ曲だ。ここに芸人さんの表現の振れ幅をどのように組み込むかが鍵になる。

 

曲にはイントロらしいイントロはない。劇の幕開けのようなふわりとした和音から、いきなり歌に入るイメージだ。そこで、いきなり歌に入ることとし、Aメロ一回目をイントロというか「幕開け」として使い、Aメロ2回目を本当のスタートに見立てることとする。というのは、この曲は最初のAメロが3回あるやや珍しい構造だからだ。3回のAメロを同じ構造では合唱としては飽きがくる可能性があるので、ある程度ネタを変えてゆかねばならない。そこで、イントロ、ソロ、合唱、という3段階で登ってゆく。

二回目のバックにリズムを出すためにセミ・ヘミオラを使用する。ヘミオラについてはDUCの演目を追ってもらうと時々登場するが、解説は別の機会に譲る。

 

Bメロがサビになるが、16小節ある。8小節を2回繰り返す構造だ。まだ1番だというのにサビを2回繰り返す構造と考えられるが、これはちょっと珍しい。「歌唱力=表現力」で勝負する原曲のソロシンガーでなら活きる構造だが、合唱では個人の歌唱力ではなく集団力でその表現を成し遂げる方が良い。そうすることでプロのシンガーでない集団が原曲に匹敵する表現を生み出せる可能性が生まれる。

そこで、前半をソロで、後半をコーラスで作ることにする。前半のソロではコーラスがリズムを作り出し、後半はソロがリズムを作ってコーラスが作る歌をサポートする。「変幻自在」の芸人合唱団むきのアレンジと言える。

の後のラップ部だが、当然こがけん氏を当てることに迷いはない。その直後はふわりと落として、那須さんのメロウなソロ、その後高揚してゆく曲調に合わせてゴスペル調の地声コーラスでピークへ。実のところ、その瞬間の音圧は演歌合唱団に引けを取らない。声量の面でというより、いい声でなくてはいけないという束縛と無縁な芸人合唱団の声では、雑味がプラスアルファの音圧になるのだ。

さらにストンと落として河邑ミクさんのソロになる。地声での音域の広さはおそらくチーム随一だ。その後はさらに高揚してゆき、最後にチャンス大城さんの擬似ギターが、不思議と切ない響きを作る。オンエアをご覧になったことはお分かりの通り、ミクさんはここで歌詞を飛ばしている。収録時サブルームでは誰もがあっと思ったが、なぜか曲は高得点を記録した。3ヶ月近く経って家でその部分をオンエアを見直してちょっと驚いたが、「元曲を知らなければ全然問題ない」演奏に仕上がっていた。「愛が夢を、夢が愛を見つける」のフレーズは、間にあるべき「邪魔する 」が抜けて、その分コーラスのセミ・ヘミオラがフィーチャーされ、なんとも美しく仕上がっていたのだ。

 

しては引き、引いては押す、笑わせるのかと思いきや、世界観に引き戻す。この表現の自由度が芸人合唱団の勝ちの目だ。音楽のちからとはなんなのか、改めてその価値観を揺さぶってくれる。

 

 

歌ウマ芸人合唱団 DEPARTURES:

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編曲およびノート: 木島タロー

Dreamers Union Choir (DUC)主宰
フジテレビ「オールスター合唱バトル」監修(総編曲/指導)
国立音楽大学合唱講師
東京経済大学ゲスト講師
アメリカ海軍契約ゴスペルディレクター
一般社団法人パワーコーラス協会代表理事
片手で持てる防音室「Voicease」開発
著書
6色発声トレーニング
歌って生き抜け命のコーラス

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