音程 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 4
リズム: ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 4.5
歌詞 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 3
技術 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 4.5
こういった「合唱にありえなそう」な曲目が制作側から飛んでくることには慣れた。信頼していただいている証拠である。
僕が最も合唱にしにくいと思う曲目は First Love のような「個人的な失恋歌」だ。そういう曲を合唱として授業でやると考えたら、歌い手である生徒たちに「合唱する理由」を持たせるのが難しい。一人で歌えばいいじゃないか、と考えるのが普通だし、僕だってそう思う。しかしこれはオールスター合唱バトル。今や、とある曲を合唱する理由はそれだけで十分だ。
ちゅ、多様性。も個人的な歌詞とは言えるが、この曲にはナンセンスな異世界感と言葉の遊びがある。そういう意味で、それほどやりにくい曲ではない。
問題は、最強ボーカリストと名付けられた集団の方で、トップ4(龍玄とし/X JAPAN TOSHI氏、秋川雅史氏、木山裕策氏、ケミストリー川畑氏)だけでもお名前を聞いただけで立ちすくむような方々だ。
このお顔ぶれで1ヶ月の間にどの程度の挑戦ができるか推測しなくてはいけないし、最高の素材を揃えてもらって衝撃的な演奏へと作り上げられなければ、何より恥ずべき結果だ。
まず、男声合唱だが4声とすることにした。かねてからお伝えしている通り、ゴスペルミュージックに準じた3声の方が生活音楽としてはハモりやすく、伴奏の自由度も高く、何より、パワフルにもしやすい。
が、今回出場7合唱団のうち唯一の男声合唱団であることを考えると、他の合唱団との差別化のためにベースの響きは欲しい。だが、ベースがある3声(テナー、バリトン、ベース)では、メロディーが高音の時に和音が薄くなるので、高音域に3声が集まるチームにパワー負けして勝てなくなる。勝利のためには4声を選ばざるを得ない。
人は本能として興奮すれば高い声を出したくなる。そのため、興奮が伴うパワーコーラス型の合唱ではベースの音程を守るのは難しくなる。これがゴスペルのコーラスにベースがない大きな理由でもある。だが、今回は秋川さんがいらっしゃる。ベースのリードを担っていただけるかを制作サイドから確認していただいた。
テナーの最高音をレとしてある。通常この辺りはアルトの最高音だが、としさんやYouTuberのずまさんなど、名だたるハイテナーの方々の参加を鑑みての設定だ。
男声の高音は出し方によって大きく曲の雰囲気を左右する。これらの高音を歌う際、ベルティング(地声での張り上げに近い音)とミックスボイス(柔らかな裏声に近い音)を使い分けていただくよう、各シンガーには書き込みを入れてもらいながらトライしていただいた(販売している楽譜には印を入れてある)。このような技法は他のチームではとっていない。最強ボーカリストならではのお願いだ。
トップ4のソロを織り込みたいが、としさんと秋川さんお二人の絡みは当然フィーチャーしたい。としさんはグッと喉頭をあげ、秋川さんは下げる。お二人の声はバイオリンとトロンボーンほども違う。こういう場合は3度(ドから鍵盤で2つ上のミまでの距離)よりも6度(ミから鍵盤で5つ上のドまでの距離)でハモる方が両方が引き立つ。また、フレーズについてもずらした部分が多くあった方がいいだろう。
原曲がGet onを「ゲロ」、Bet on を「ベロ」と読ませているのは英語では「モンデグリーン」と呼ばれる歌詞の手法だ。スライ&ファミリーストーンの曲の歌詞の「Be Mice Elf(ネズミの妖精になる)」と書いて「Be myself(私自身になる)」と読ませるのが有名で、発音が同じだが意味が違うつづりをしてリスナーに頭をひねらせる。
これを逆に利用し、最強ボーカリストたちには原曲のようなゲロ、ベロ、ではなく、英語の発音で「Get on」「Bet on」と歌ってもらうことにする。ゲ、ゲ、ゲロ、はあのちゃん向き、Get, Get, Get On! が最強ボーカリスト向きだとは思わないだろうか?
無事にロックのノリが出来上がれば会場の度肝を抜くはずだ。
バンデーション(オーケストレーションの対語で、バンドの音を声に転換すること/木島の造語)としてはBメロの「ティギリギダッ」というギターの音の他、サビ後半で歌詞「Get on, get, get on」を使用してドラムのフレージングを再現することを試みている。
オンエアではMCから「合唱でこんなにライブ感が出るんですね」というコメントをいただいたが、
アリーナでやってもリスナーを興奮させられるような、合唱のイメージをすっかり変えてしまうグループの誕生に心から感謝したい。
@gassho_battle 二曲目もヤバいっす!#オールスター合唱バトル ♬ オリジナル楽曲 – オールスター合唱バトル