難易度:
音程 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 3.5
リズム: ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 3.5
歌詞 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 3.5
技術 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 4
今回、Habit と並んで J-popの直近ヒット曲として採用されたと思われる。
ADOと言うまさに新時代の歌姫のボーカル力によって彩られてはいるが、楽曲のサウンド全体にはシンプルなロックが基調だ。
とはいえ、2020年代音楽独特の2つの大きな特徴がある。
一つは、歌詞に対する「譜割り」だ。「世界」を「Sかい」、「見せる」を「mせる」、「始まる」を「はじmu」と歌うなど、以前は音符が必ず2つ以上必要だった単語を音符一つで歌うところがいくつもある。今回この歌を歌ったのはそのような文化に慣れていない「演歌歌手合唱団」で、歌唱にあたってちょっとした難関だった点になる。
もう一つの特徴は全体構成だ。
この曲はメロ(楽段/セクション)が1コーラス(一番)内に4つある。
10年くらい前は、ワンコーラスは以下のように3段構成であるのが標準だった。
1番:
A – B – C,
2番:
A – B – C,
D(「大サビ」や「Bridge」とも呼ばれる)
C(静かめ、「落ちサビ」)
C (盛り上がって)
これはだいたい90年頭には確立された形だったのではないか。
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例:
A 2人で写真を撮ろう…
B 約束した通り…
C(サビ) 愛を込めて花束を..
もう一回A,B,C、そして、
D Violet, Indigo, Black & Blue…
再び C…
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この形ではだいたい、Aメロで持っていたフレーズの呼吸をBメロで一度早くするか(絢香「三日月」など)もしくは遅くして(Superfly「愛を込めて花束を」など)、サビであるCで再びAメロの呼吸を取り戻す、という作りで、感動を誘発する楽式として非常に合理的に思える。
クラシック音楽のソナタ形式の、主題提示部、展開部、再現部、の楽式になぞらえることもできるだろう。
それに対して、共に2020年代のヒットである新時代や紅蓮華、ボカロ曲のヴァンパイア、などは、ワンコーラスがA, B, C, Dで構成される4メロ型だ(その代わり「大サビ/Bridge」がない)。正確なことは言えないが、こういう形は「長すぎる」「複雑すぎる」としてポピュラーの現場では長いこと敬遠されてきたのではなかっただろうか。
しかし、以下のように 70年代 80年代には AAB, AB のような1コーラス2部型が一般的だったことを考えると…
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例「いとしのエリー」
A1 泣かしたこともある..
A2 二人がもしも冷めて
B 笑ってもっとBaby…
例「オリビアを聴きながら」
A1 お気に入りの歌..
A2 ジャスミンティーは
B 出会った頃はこんな日が..
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自然な進化の時が来たとも考えられる。
が、この4メロの呼吸に僕自身がついてゆけてない段階では、正直に言って合唱アレンジで「呼吸を変えてゆくネタがもたない」と感じられた。
いやしかしソナタ形式になぞらえ、クラシックの大作曲家たちが再現部(≒サビ)前の「展開部」に時間をかけてきたことを思えば、4メロ式も不合理とは言えない、と曲に向き直る。
結果作り上げた形はこうだ:
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Aメロ(ジャマ者やなもの..)はハーモニーよりもアクセントに重心を置く。
B(Do you wanna play)は印象深い部分のみをハーモニーで補う形とし、「アクセントからハーモニーに重心が移ってゆく」経過として使う。
C (I Wanna Be Free..) ではいよいよフレーズも長くなるため、Aメロとの対比を利用して、ここでハーモニーに重心を移してゆく。
D はユニゾンで開始する。ユニゾンこそが合唱において最も力強い(一つのパートを歌う人数が多い)表現であるためここに置くのは自然だが、加えて、Cで一旦使い切ったハーモニーの感動を一旦ゼロにリセットするためでもある。そして、D後半でハーモニーに復帰する。
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原曲ではADOの多彩なボーカルとバンドの洗練されたサウンドで聴かせ切るところ、本合唱アレンジを歌う方々は、アレンジに織り込まれた押し引きの表現で乗り越えていただきたい。
Aメロはアクセントを全員で捉える練習を、Cメロは力強い地声のピッチを整えハーモニーを重視した練習を、とメリハリをつけると良いのではないか。
右耳から自分のパートの音が流れ、左耳からその他のパートが流れる、パート音源動画、
https://youtu.be/tl2zo36SbfE
https://youtu.be/FVve1BEqyjY
https://youtu.be/Lr9ugz45h4Y