感情の乗りどころを引っ越す リンダリンダ/Z世代アイドル合唱団

音程 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 3

リズム: ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 3

歌詞 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ 3

技術 : ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 3.5

 

ボーカル基礎力:⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ◾︎ 4.5


 

の世代には忘れることのできない一曲だ。当時、バンドマン達はどこでもこの曲をやりたがり、一度始めるといつまでも歌いたがった。演奏の上手さだと思われているものは音楽の価値においては一部に過ぎない、ということをまざまざと見せてくれたのがブルーハーツというバンドだった。「この叫びなら俺たちにもできる」と思わせてくれたのだ。

 

J-popの多くのジャンルではコード進行が情動に大きな役割を果たす。例えば、F-G-Em-Am や、C-E7-Amというコード進行は、進行そのものに情動を感じられるはずだ。

 

それに対しパンクロックであるリンダリンダのサビは C-F-G のくり返し、いわゆるスリーコードだ。犬のおまわりさんやメリーさんの羊のような童謡ならともかく、今、スリーコードで人の感情に訴えるのは難しい。ビートとノリで一夏のフェスを押し切るだけならよいが、リンダリンダの歌詞にはただ事ではない人生物語の末の複雑な感情が乗っているように感じる。この曲がそんなスリーコードで情動を爆発させられるのは、既存の上手い下手の価値にとらわれない甲本ヒロト氏の凄まじいボーカル力によるところが大きい。

 

の感情表現の手法をアイドルの集団に求めるのは無理がある。アイドルには無理だ、ということじゃない。アイドルが自分たちのジャンルのために育ててきたボーカル力にブルーハーツのボーカルスタイルを目指させるのは肉体的に無理が生じる可能性があり、指導として適切でないということだ。

 

そこで、「コード進行に感情を代弁させる」形をとる。原曲よりも多く借用和音(他のキーから借りてくる和音。Cのキーで言うD、E、C7など)を使用することでコード進行が情動を作る方向に持ってゆく。そのことで、アイドル達の声もコードの助けを借りて感情を乗せることができる。

 

オールスター合唱バトルのアレンジでは、あまり原曲からコード進行を変えたくない。前述の通り、コード進行は情動に直結するため、あまり変えると思い出と摩擦を起こす可能性がある。ただ僕の経験則では、コードを「少し複雑にする」ことに対するハードルは低い。同じ感情に到達するために少し遠回りするので、むしろ情動が膨らむこともある。逆に「少し単純にする」ことは方が「あるはずの情動がない」ことになるので時代に逆行する。過去の曲をそういうふうにリバイバルする例はほとんどないのではないか。

 

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例:
とある原曲 C – F – E – Am
○アレンジ C – F – Bdim E7 -Am
× アレンジ C – F – G – Am

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て、リンダリンダの曲末尾の繰り返しは問題だ。だんだんと高揚し崩壊してゆくパンクロッカーだからこそ延々とした単純な繰り返しに意味がある。アイドル達が合唱というアンサンブルをする中で、単純に繰り返すだけという同じ手法で同じ感動は得られない。

 

甲本氏ご本人が「意味などない」と言ってのける「リンダリンダ」という歌詞には、だからこそ、歌い手一人一人が勝手な思いを乗せて歌ってきたものと思う。
そこに変化のために何かしらの言葉を載せなくてはいけないとしたら、この仕事の中で僕にある権利は、この曲がもともと持つ言葉を使うことだけだ。

 

ドブネズミが他の生き物より暖かく優しいという事実は科学的には存在しないようだ。それではなぜこの歌はそう歌うのだろう。僕の理解はこうだ。ここでのドブネズミとは「誰もが汚いと言って敬遠する存在」の代表だ。その存在と自分を重ね合わせ、「汚いと言われているあいつらや俺らにも美しさがあることを大人達は分かろうともしない。いいさ、お前らが汚いと言って駆除しようとするアレに俺はなってやる。」と世界に対して宣言しているのではないか。

 

そのドブネズミをサビに呼び戻すこととする。ただ、ドブネズミのフレーズをサビのリンダリンダに重ねようとすると問題がある。そのまま重ねるとコードが合わないしお互いを殺し合うのだ。いじくり回しているうちに、2拍前にフレーズをずらして重ねて見るとピタリと合ったため、ルール違反っぽくなるがこの形とした。それは、最後にリンダリンダが消え去ってアカペラになるとビートの頭の感覚が失われ元のフレーズ感と齟齬がなくなる、という戦略によって許される形だ。

最後、ブルーハーツは自分の中のドブネズミを世に解き放って終わるが、アイドル達はドブネズミを抱きしめて終わる。

 

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う際は、この音楽が世界に対して自分が何者かを主張して振り上げる拳であることを思い出してもらいたい。

@gassho_battle ロック🎸#オールスター合唱バトル ♬ オリジナル楽曲 – オールスター合唱バトル


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