合唱編曲時 最大の武器 / アイノカタチ by ママ合唱団

ンエア時、会場の空気としても、今回の全14曲の選曲の中で「一番合唱らしくなりそう」な一曲だという印象を持たれたようだ。確かに、尖った言葉(ちゅ、多様性)や突出したビート感(第ゼロ感)や野生味のあるシャウト(リンダリンダ)が元の曲にないため、日本の教育現場で合唱だと思われている楽曲群に近い空気があるかもしれないが、逆に、ではどうやって特性を出して勝つか、が難しくなる。ただ綺麗なだけで終わってしまいかねない。

 

ただ綺麗なだけの何がいけないかと問われるかもしれないが、「綺麗さ」は「統一」と表裏一体だ。つまり、綺麗さを至高の目標とすることは個性を排除する危険を孕んでいる。全員が自分個人の表現の最大値を恐れてしまうのだ。合唱バトルや学校教育など、豊かな個性の集団においては「綺麗な音楽を目指す」ことは慎重に行わなくてはいけない。個性を抑えさせれば、そのようなイベントには参加したくないという子供が出る方が自然だ。それに、個人ごとの表現の最大値が発揮できた状態での統一こそが表現の最大値であって、そういうことが可能なグループがあれば、統一のために個性を削ったグループでは勝てない。勝つためには、綺麗さを目指すだけのアレンジではいけないということだ。

 

ついでに言うと、綺麗さで勝負しようと思ったら元々マーケットが似ているフィールドから集まったZ世代アイドル合唱団の方が声質が揃いやすく、有利になる可能性が高い(未来予想図II アレンジノート参照)。

 

ントロの印象的なフレーズを分解して3声に分けてゆく。少し難しい話になるが、例えば、イントロの最初のミb→シbという跳躍はCbmaj7という和音の「ガイドトーン(ジャズ理論において、一つのコードを特徴づける主要な2つの音)」だ。これを分解し、パートごとに一つ一つの音を担わせることで、「メロディーが内包している和音を表に出してやる」という結果になる。

 

Aメロに入って以降は基本的に、全員が歌詞を歌う形を守ってゆく。芸人チームでは「しましまパラパラドゥルルルパ」など言葉を思い切って崩しても楽しみを作り出すし、最強チームのちゅ、多様性。のようなそもそも歌詞に遊び心のある楽曲では言葉の持つリズムをフィーチャーして散りばめる。が、アイノカタチという曲では、そしてママ合唱団という集団では、一人一人が言葉を言う力で勝負する。

 

ビの頭の、だ-い-す、の、Db-Gb-Bb、というメロディーは、いっぺんに鳴らすと Gbメジャーの和音になる。このような音の並びのことを分散和音(アルペジオ)という。当然これを活かし、階段状に和音が膨らむ形をとる。奏法としては、「だ」からだんだんとクレッシェンドする形になる。その形を踏襲してサビ全体は進んでゆく。

 

て、楽曲のピークをどこに作るか。音圧で勝負すれば芸人や演歌チームに勝てないし、和音の美しさで勝負すればアイドルに引けを取るかもしれない。がむしゃら感で勝負すればアスリートに勝てず、リズム感で勝負すれば最強チームに、何かの仕掛けで勝負すればものまねに勝てない。

 

あまり選択肢はないが、合唱における最強の武器で勝負することとする。それは「ユニゾン」だ。20人編成が原則の合唱バトルでは、3声だと1パート6、7人。4声だと1パート5人。しかしユニゾンでは20人全員が同じ音を歌うのだからそのパワーは数倍となる。まったく、合唱においてはユニゾンこそ最も力強い表現なのだ。

 

まして一つの言葉を、実生活でその言葉を共有できる人々が一つの音で歌う時、その力は、どんなに技巧を凝らした他の仕掛けよりも強い。楽器も取り去ってしまうことにしよう。数小節間の丸裸のユニゾン。「何万回」の「か」の音の変化を全員で統一したり、お互いの手に触れながら気配を読み合うなど、このユニゾンの統一に時間をかける。これが成功すれば「思い」の力が勝ちを引き込む。今大会最大のダークホースとなるはずだ。

 

らは考えなくてはいけない。一日5時間、週に5日練習するミュージカルと、週に一回二時間の練習しかしないゴスペルがどうして同じヒットチャートに上がることが出来るのか。それは、前者が「演じるアート」の歌を磨いているからで、後者は「生きている時間そのまま」が歌であるからだ。音楽家であろうがなかろうが日々を一生懸命に生きるただ一人の人間であること、それこそが最大の武器になることもある。それが生活音楽としての合唱のもつ震えるような魅力でもある。

ママ合唱団が最強ボーカリストを押さえてファーストラウンドトップに立った瞬間、これはこの場にいる全ての人にとって大変な財産になる経験だと感じた。

 

なお、SNS上で色々噂したがる人がいるが、審査員とも会話し、統括のサブルームとフロアを行き来する僕から言わせてもらうが、現場での採点はガチである。

 

アイノカタチ by ママ合唱団 TikTok

@gassho_battle #オールスター合唱バトル #合唱 ♬ オリジナル楽曲 – オールスター合唱バトル

  • https://youtu.be/Ck20uTxlrJY

    https://youtu.be/ssvwuSAIxJE

    https://youtu.be/eW5sItbtcQ0

    伴奏

    https://youtu.be/AnZn9C_P5JQ

     


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