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ストリングス & クワイアーという「霊峰」

2017.5.26


難題:

ストリングスとクワイアーというコンビネーションは、リスクに見合うだけの興奮があるとは言え、冷や汗から油が取れそうなほどに神経を使う作業だ。

このコンビネーションのハードルが高い、幾つかの大きな理由がある。

 

・ストリングスとバンドマンは、通常同じ言葉を使わない。

例えば、「リハーサル記号」。
クラシックでは、例えば「Aメロに戻る」という感覚があまり無い。通常は曲が進行すれば、A、B、C、D、E、と進行するので、例えば、「じゃあ、Aメロの2回目から行こう」といったバンドマンが慣れた言葉も、通常、弦楽器の奏者には「??」となる。

そして、音名。弦奏者は通常ドイツ音名に慣れている。C#は「ツィス(Cis)」、Dbは「デス(Des)」。バンドマンにとってややこしいのは、クラシック奏者に「エー」と言ったら「ミ(E)」のことで、じゃあ英語で「エー」(A)であるはずのラはというと、音大では「アー」。 一番ややこしいのが、B(シ)は「ハー(H)」で、「べー(B)」と言ったら「Bb」のこと。

 

・アレンジの作業量
バイオリンI、バイオリンII、ビオラ、チェロと言う編成のための4声アレンジの計算は半端な作業ではない。ブラスの3声はある程度、クワイアーのアレンジの考え方とも対応できる部分があるが、ストリングスの作る和音や繊細な動きの世界は和音についてかなり違ったアプローチが要される。

 

・音圧差が大きい。
バンドが通常作り出すパワフルなサウンドに、平均的な音量が低い弦楽器を対応させるのは生半可なことではない。リハーサルも本番も、弦の奏者が自分の音を豊かに聞ける状態で行うのはそれなりの設備が必要だ。ただでさえマイクが多く音のコントロールが難しいクワイアーというスタイルの音楽に弦カルテットを追加するのは、よほど広々としたステージで演奏するのでない限り、ウイスキーを焼酎で割るような無茶を伴うコンビネーションだ。

 

幸運:

これらのハードルを今回乗り越えられるのは、DUCに、Power Chorus というコンセプトがもたらした幾らかの幸運があるからだ。

 

Helz Strings:

今回のストリングス、Helz Strings は、ポピュラーやジャズにも注力する洗足学園大学の出身で、ポピュラー系とのサウンド作りにある程度慣れてくれている。言葉の壁についてはある程度乗り越えてくれて、スタジオ作業が初めてづくしとはならなかったことに、心から感謝したい。

リハーサル記号は、「A2」(Aメロの二回目)といった記号を用いることで、バンドの考え方と弦パート譜上のリハーサル記号を一致させた。これが、日本という国で弦奏者とバンドを共存させる方法だろうと考えている。

 

作譜ソフトウェアの発展:

アレンジを乗り越えさせてくれるのは、昨今の作譜テクノロジーだ。
Sibeliusというソフト上に組み上げた、クワイアー譜面、バンド用コードチャート、そこにストリングスアレンジを構築して、完成したらワンクリックすれば、各楽器用のパート譜が出来上がる。かつては、スコア(全ての楽器が入った「大譜表」、一曲十数ページにもわたる)が完成したら、そこから、各演奏家が使用するパート譜(多くて3ページ)を作るのは「写譜屋(参考リンク)」というプロの仕事だった。その作業は費用と時間がかかり、時にミスもある。その時代だったら、今回の作業は丸一年あっても足りなかっただろう。(※今もテレビなどの大きな仕事は写譜屋さんが入ります。)
しかもできた譜面を再生すれば、スタッカート、マルカート、フォルテピアノのような技法まで含めてSibeliusがある程度演奏してくれるので、譜面ミスの大部分は避けられる(もちろん、本物の弦の演奏の豊かさに及ぶようなものではないが)。

 

譜面の作り方とは、ミュージシャンの「言語」だ。譜面の作り方によって、スタジオでの作業時間(≒コスト)は3分の1にも3倍にもなる。この点を、工夫で乗り越えられたことに一安心。
今回の弦との共演は、今のテクノロジーがあって初めて可能になった夢だ。

Strings楽譜

 

 

富 正和:

音圧差については、DUCの音響エンジニア、富氏があって初めて乗り越えられる。NHKの音響エンジニアから、とにかく「生楽器を拾うマイクがステージ上にやたらに多い音楽」に特化して技術を磨いてきた富氏の存在と、クワイアーミュージックの未来に賭けてくれる献身的な情熱がなければ、今のDUCの市場レベルでこのようなアイディアはただの無謀で、サウンド的には惨めな結末を迎えていたかもしれない。
リハーサルから本番まで、富氏のケアがあって初めて可能になる。

 

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リハーサルでは、Helz Strings と作り出すサウンドの豊かさにメンバー一同興奮。

クワイアーとのコンビネーションには普通、弦より先にブラスセクションを発想する。音圧的にも、ブラスと組む方がはるかに楽だ。

でも、ブラスは楽曲にパワーと華を与えてくれるが、ストリングスは楽曲を宇宙いっぱいの空間と繋げてくれる。音楽を生み出しているのではなく、音楽の中に身を置いているのだと思い知らせてくれる。
確かシュタイナーも、弦楽器に関してそのようなことを言っていたような気がする。

クワイアーと弦カルテットとコンビネーションすることには、難題を超えても成し遂げたい不思議な魅力がある。

 

今回作り出したアレンジは、これからのDUCの大切な財産になる。
書きに書いた11曲(弦入り曲2ステージの合計)の楽譜とDUCの歌声が、空間に解き放たれる。

6.18。

チケット予約:Power Chorus The Shop

 

by Taro Kijima


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